イケメン!?

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もっと知りたい興福寺の仏たち (アート・ビギナーズ・コレクション)

金子 啓明



東京の「阿修羅展」もいよいよ残り一週間となりました。

開館時間も延長になるとかで、ますます阿修羅人気はフィーバーしているようです。

しかし、この朝日新聞の記事は、「イケメン仏像」って・・・

阿修羅は少年の姿なので、ボーイだから「イケボー」とか(笑)すいません。

いずれにせよ、そんな軽い言葉はあまりに似合わないのです。


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阿修羅は、インド神話の神で、最高神インドラ(帝釈天)に戦争をしかけるという、

激しく戦闘的な神でした。

しかし決して勝利することが出来ないことから、

阿修羅の生き方は永遠にすくわれることのない六道(地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人、天)

のひとつに含まれるという、あそろしい宿命を持つことになるのです。

通常の阿修羅像は、牙の生えた激しい怒りの顔を持つものです。

しかし、この興福寺の阿修羅像だけがなぜか、静けさと繊細さを持ち内省する少年の姿なのです。

なぜなのか・・・。 イメージ 5

それは、阿修羅像を作らせた奈良時代光明皇后が信仰していた経典に記された‘懺悔の教え’が

像の作者に影響を与えたから・・・・。

な~んて言われていますけど、それなら少年の姿をする必要はなく、成人男子の姿にしたほうが

重厚感がでていいでしょうに。

私が思うに、これはやはり作者の百済から渡来した仏師・将軍万福(しょうぐんまんぷく)の、個人的な

趣味でしょう!

それに、これだけ思いの篭った像が、だれかのいいなりで作られるわけがない。

作者の秘めた思いを思い切り込めることで、はじめてその作品に魂が宿るのです。

八部衆十大弟子も将軍万福によってつくられたことがわかっています。

同じく彼の手による阿修羅の仲間の八部衆も、阿修羅同様少年や、あるいはもっと若い姿であらわされて

います。イメージ 6

いずれも現代人の感性に訴えかける容姿です。

1,300年も前に生きていた人が、現代と同じ美的感覚をもっていたことの奇跡!

あるいは、1,300年まえから人間が美しいと感じるものは変化していないのかもしれない。

現代にいたるまで、あまり人目にふれることがなかったから、大衆的な人気もなかったのだろう。

いずれにせよ、将軍万福という一人のアーティストは、時を超える美の世界を作り出し、1,300年

たった今、世の中にひろく認知されたということなのでしょう。

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